・・・





負けました。







4-3。



逆転負けでした。





今日、社は後攻でした。
スタンドも3塁側でした。




夏から、明石球場の1塁側・先攻にいい思い出がなかったので
3塁側・後攻はとても嬉しかった。

今日は勝てるって気がしてたの。




球場に入る前、社のシャツを着ていた保護者の方たちに話しかけられた。


「今日はなにで来てるの?」

「応援バスです〜」

「そうなんやー。今日は勝てそう?」


「絶対勝ちます!」


友達とハモりながら言った。
自信はあった。



絶対に笑って帰るって思ってたの。
このときは。





球場に入って、応援の席に着く。
そこで、社のノックを見たり、応援の掛け声したりした。



相手のノックが始まって、見ていたんだけれど、
守備が結構もろく感じられた。
簡単なゴロが手につかない。はじく。送球が大きくそれる。



「何?慌ててるんかな?それとも・・・」



おぉ、いけるかも。さらにそういう意識は募った。



社の守備はキチキチしていたので、
昨日の反省もあるだろうと、思っていたので安心していた。
怖いのはエラーなのだけれど。



グランド整備の時、今日のスタメンが発表された。


1番 ショート  宮田君
2番 セカンド  安田君
3番 ライト   田畑君

4番 ピッチャー 大前君




球場が、一瞬ざわついた。

昨日、指に違和感を抱えているようなそぶりでライトへ下がっていった社高校のエースは、
今日も先発ピッチャーとして出場していた。


そのことに、皆感動し、安心感を覚えた。

さらにアナウンスは続く。

5番 ファースト 西山君
6番 レフト   西村君
7番 サード   山羽君
8番 キャッチャー松田君
9番 センター  神戸君



全て終わって、試合が始まった。


1回表は、ヒットを許しながらも、先制点を与えることをしなかった。



1回裏、社は早々と先制した。
エースで4番という重役を担っている、大前君のタイムリーだった。



その後も、大前君は投げ続け、点を与えなかった。



6回表、ピンチになったけれど、ここもなんとか抑えることが出来た。


その裏、社は待望の追加点を2点入れることが出来た。


キャプテン宮田と、センバツベンチ入りの安田君のタイムリーだった。



0-3になった。



3塁側は、90%いや、95%は勝ちを確信していたはずだと思う。


誰もが、そう思っていたと思う。





でも、三田学園の猛打と、
社のほころびが出てしまった。



7回表、まさかの4失点。




ピッチャー大前の連続フォアボール。
バントを決められ、ヒットを打たれる。
これで1点。

空振り三振を取るが、
フォアボール。
この際、1年生キャッチャー松田君の悪送球。
1点追加。

1・3塁で、ヒットを打たれる。

まさかの同点。

あとアウトは1個だった。
2死1・3塁が長く続く。

もうちょっと。
あと1ストライク…

ヒットを打たれる。

まさかまさかの逆転だった。

盛り上がる三学のスタンド。
社とは対照的だとつくづく感じる。


ここで、ピッチャーが交代する。
4失点という結果を抱えながら、エース大前はライトへと下がっていった。



マウンドには、昨日好リリーフを見せた1年生の村上君があがった。



ライトに下がった大前君は、
膝に手をつき、自分を責めているように見受けられた。

悔しかったんだろうな…。


村上君は、なかなかボールが決まらず、
ストライクが入らなかった。

フォアボールにし、満塁にしてしまう。


どうしよう、どうしよう。
ここで、とめて・・・!


なんとか、満塁からの最悪の結果は免れた。



点差は1点だった。
あと攻撃は3回もある。
後攻だし、なんとかなるよね?



ガンバレ、ガンバレ!!


強くなる社応援団の声。


だけど、その裏は無得点に終わった。

ヒットが打てない。


6回途中から、三田学園のピッチャーが交代していた。
エースの、中山君に。



フォアボールを貰ってチャンスを作るが、
バントを失敗。チャンスをつくづく潰してしまう。


8回も村上君はボール先攻が目立つ。
なんとか抑える。

8回裏。
どうしてもここで同点に追いつきたかった。


でも、4人で攻撃は終了した。



打線が続かない。




今大会、新チームの社がずっと言われ続けている言葉だった。



まさに打線が繋がらない。
ランナーが出ても生かしきれていない。
エラーを貰っても、後が出ない。



9回表、三学のピッチャー中山君に、デッドボールを与えてしまう。
一旦ベンチに下がる中山君。臨時代走が出る。

ピッチャーに当ててしまったという心配と、
ランナーを出してしまった心配とが重なり合って、どうにかなりそうだった。
見ていられなかった。

思ったより村上君は落ち着いていて、0点に抑えた。



いよいよ9回裏。


ここで1点入れば延長戦。
勝ち越せばサヨナラ。


たった1点差。


大丈夫。


祈るスタンド。

声がおかしくなりそうなほど叫ぶ。

メガホンが潰れそうだ。




御願い。勝って・・・!




打順は、5番西山君からだった。


西山君の応援歌は、ルパンだった。

昨日の試合でも、最後9回粘りを見せた時にこの西山君もまた粘ってヒットを打っていた。


期待が高まった。


タッタ〜タラ〜タ〜タ〜タ〜 あつしー!
タッタ〜タラ〜タ〜タ〜タ〜 あつしー!



がんばれ、あっちゃん・・・!
がんばれ、がんばれ、がんばれ・・・がんばれ・・・!!



あっちゃんのバットは、空を切った。

溜息が漏れるスタンド。

後2人…

ルパンはノリがいい曲で、
次の西原君にもルパンが使われた。


タッタ〜タラ〜タ〜タ〜タ〜 ゆうきー!
タッタ〜タラ〜タ〜タ〜タ〜 ゆうきー!


願いがほんの少し届いたのか?


ヒットが出た。
同点のランナーが、出た。



スタンドが沸いた。
まだまだ、こんなもんじゃない。
こんなもんで、終わらせて溜まるか!



チャンス時に使われる曲、「サウスポー」

1年生でナイン入りを果たしているサード山羽君に、その曲が使われた。


タータータタータ タタータ タタタターッタタタタータ〜 そーれともきー!
タータータタータ タタータ タタタターッタタタタータ〜 そーれともきー!


メガホンを揺らしながら、必死に応援した。


ガンバレガンバレ・・・!


転がった球は駄目かと思われた。

が、ピッチャーにエラーが出た。


繋がった。

1アウト1・2塁。

ヒットが出れば同点。

曲はルパンに戻り、
キャッチャー松田君。


空振り三振。





後1人。
頑張って。御願い。ホンマ御願い。
近畿連れてって・・・



梅田君のバットは、空を切った。








ゲームセット。



思わず悲鳴を上げてしまった。


「イヤァァ・・・!ホンマ嫌や・・・!やめてぇ・・・っ」



そんなこといっても、何も変わらないのに。
バカだな、私って。




皆呆然としてた。
ないてた子も居た。


ゲームが終わって、校歌を聴いて。
変な感じがした。
何で2日も続けて違う高校の校歌を聴かなければならないのだろうって、思ってしまった。



挨拶を終えて、
選手がこっちへ来たとき、見えたもの。




キャプテン宮田君が、エース大前君が、涙を拭いていた。




このチームの中でセンバツに出たのは、この2人だけだ。


新チームの最上級生として、
後輩を甲子園へ連れて行きたいと強く願っていたのは、この二人だっただろう。



悲しいなぁって。思った。


信じられない。

地に、足が着いていないような。


意味が分からない。


なんでなんだろう。


不思議だったなぁ・・・。



結局、1点差だったの。

たった1点差。されど、1点差。


この1点は、おっきくて、重かった。



球場出るまで放心状態。

涙はまるで出る気配がなかった。





球場を出てから、バスへ帰る。


3塁側だったので、バスへ帰るには、1塁側を通らなくてはならなかった。



素で、嫌だったんだけどな・・・。



笑っている三学の人達。
あぁ、なんか嫌だなー…



昨日は、帰りもまだ笑えたんだ。
希望がまだあったから。



今日こそは、笑って帰りたかったんだ。

嬉しい報告メールを、打ちたかったの。



あぁ、駄目だったな。



これで、社の秋は終わって。


長い長い冬の始まりを迎えた。



























今日の試合は、よく考えると、勝てない試合だった。


3得点。
ヒット10本。
17残塁
10与四死球
バント失敗3。
エラー3。



ヒット10本で3得点なのは、ちょっといただけない。打線に切れ目がある証拠。
それが17残塁を物語っている。


10与四死球
ピッチャーの状態がよくなかったのか?
大前君は昨日のこともあったし、ね。


バント失敗3

バント失敗は、昨日も目立った。
上手く転がしてくれると思ったのだけれど。
前チームは…と比較してしまいそうになる。最悪だ、自分。

エラー3

昨日よりは減った。


ということで見てはいけない。
エラーはなくて普通だと思う。
高校野球だからと言って、エラーするのが当たり前だとは思わない。


エラー3つは多すぎ。
昨日のはありえなかった。


重要な場面でのエラーが目に付く。




友達も言ってた。

「こんなんで近畿行ってても、勝てんやろな・・・。」



そりゃそうだなと、思う。

逆に言えば。
寧ろ、負けてよかったのではないかなと思う。





これで悔しさが生まれるだろうし。
夏に向けての、いや、先ずは春なのだけれど。
夏に向けての、練習が出来る。


出来ていない守備・打撃を一杯一杯頑張って、
切れ目のない強打の打線、強く堅い守備を築き上げて、更に成長した投手陣と共に、

夏の選手権を勝ち登って欲しい。



すべては甲子園に出るため。




社球児の戦いはもう始まっているんだよね。




立ち止まってなかんか、いられない。





私も、何時までも落ち込んでちゃいけない。


前を見よう。
ガンバレ。ガンバレ私。



今日のことをバネに変えて、
前へ進もう。ね